高千穂遙の大混線“かかってきなさい”
VOL.36 トマティス・メソッドによるトレーニングというのを受けています。これは耳の機能を改善させ、日本人には聞きとりにくい高音域の音を認識できるようにするための訓練です。わたしはちょっと耳が悪くて、電話などでよく女性の声を聞き落とすことがあります。そこで、これを受講してみる気になったのですが、いまはまだ途中です。効果もさほどでていません。本誌が発売されるころにはもう終了しているはずなので、次回あたりに結果をレポートしてみたいと思っています。楽しみにお待ちください。 略 VOL.38 略 トマティス・メソッドは、基本的には外国語の学習トレーニングです。 メソッドをつくったトマティス博士は、フランスの人です。この人が、ある日ふっと気がついたのが「なぜ、フランス人は英語が苦手か」ということの理由でした。 理由は簡単。フランス語の使用する音域と英語の使う音域が異なっているからです。人は、自分の聞こえる音しか発声できない。だから苦手にするのです。 目から鱗ですね。たしかにそうです。聞こえていない音はだしようがありません。 そこで、博士は聞きとれていない周波数の音を聞きとれるようにし、ヒヤリング能力も、会話能力も一気に向上させる画期的なメソッドを開発しました。 聞きとれていない音というのは、高周波数帯の音です。日本語の場合、メインに使う周波数帯は1500ヘルツまでで、それ以上の周波数はほとんど使われていません(フランス語もほぼ同じ領域)。しかし、英語は2000から1万ヘルツあたりの音を多用します。この音が日本人(フランス人)には聞きとれないし、発声もできないのです。 わたしは実は耳がよくありません。けっこう何度も耳の病気を子供のころにやったせいかもしれませんが、高い音が聞きづらいのです。とくに電話などで女性の声を受けると、言葉がこぼれ落ちます。これにはずうっと悩まされてきました。 最初に雑誌でトマティス・メソッドの記事を読んだとき、わたしは「こんなぼろぼろの耳でも癒るのかな」と思いました。語学とか英会話能力なんてのはどうでもよく、「高音域を拾えるようになるのなら、うれしい話じゃないか」と、そう考えたのです。 さっそくテストを受けにいきました。料金は1万円。いいお値段ですね。 テスト結果はちょっと変わっていました。左はそうでもないのですが、右耳だけ6千ヘルツのところに深い谷があったのです。ここの音域の音がころっと落ちています。 カウンセラーの人といろいろ話をして、わたしはトマティス・メソッドを受講することに決めました。このメソッドは、あくまでも耳の訓練であって医学的治療ではありません。だから、効果がなくても文句は言えません。わりと賭けみたいな雰囲気があります。少なからざる額の料金を支払って、ほぼ2か月の間(真ん中に3週間の定着期間あり)、毎日、上北沢にあるセンターに通うのはいろいろな意味で、かなりの負担になります。 にもかかわらず、なぜ受講することに決めたのか。 耳が癒ってくれれば、金額の多寡など問題でないからです。 そして、わたしは、こうも思いました。 失敗しても、「かかってきなさい」のネタ数回分にはなるじゃないか。 まことにエッセイの連載というのは、偉大なものなのです。 VOL.39 略 トマティス・メソッドによる耳改善計画のつづきです。 さっさと結果を書いてしまいます。 聴力はほんの少しですが、改善されました。どうやらあまりに耳が悪いので、担当者が途中でプログラムを変更し、徹底的に6000Hz帯を攻めるという作戦をとったようです。訓練初日に自分が吹きこんだ英語テキストの朗読を最終日に聞かされるのですが、これがひどい。笑っちゃいます。しかし、訓練終了時に吹きこんだものは、わりと英語になってます。単語末の「f」や「th」なんかをちゃんと発音しているんですね。聞こえるようになったから、発声できるのです。これにはけっこう驚きました。 それと、わたしはいつもはテレビをつけっぱなしにして仕事をしているのですが、いい番組がないときはFENをBGMにして原稿を書きます。日本語の放送だと聞き入ってしまうから、意味不明の言語の放送を流しているのです。ところが、最近はこの放送に聞き入っていることがあります。恐ろしいことにニュースなど部分的に意味がわかっていたりもします。これはBGMとしては、相当にまずいことです。気が散ります。 訓練のメソッド自体は実に単純でした。教室に通い、ただひたすらノイズのような音をヘッドフォンでえんえんと聞きつづけるだけです。もとが外国語習得を目的としているので、テキスト朗読というのもありますが、うまいへたは関係ありません。英語力はほとんど要求されない訓練です。 というわけで、わたしはいま、この耳をどうしようかと考えています。ここまできたら、英会話学校に通うしかないのでしょうか。 略 |